大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2955号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(爭点)

本件起訴状の訴因の記載は「被告人は二六・五・初旬頃×所自宅前道路上において何人も讓渡してはならないヂアセチールモルヒネ塩類であるヘロイン若干四包を代金二千円を以て甲に讓渡した」とある。検察官は後に公判期日に不明確な個所を補正している。論旨は本件起訴状は刑訴法第二五六条第三項違反なりと主張する。

(判旨)

訴因を特定させるためには罪となるべき事実の日時、場所及び方法等をできる限り具体的に明記しなければならないのであるが、訴因の特定とは訴因が全体として特定されていることをいうものであるから、罪となるべき事実の日時、場所及び方法等のうちの或るものが不明確であつても、訴因が全体として特定され、他の訴因と区別できる程度にその同一性が識別されるならば、訴因は不特定であるということはできないし、又右の日時、場所、方法等のうちの或ものが不明確であるとしても、この故に直ちに所論のように、訴因特定の要件を欠き、しかもその具体性の補正は許されないため公訴提起が無効となるものとは解せられないのであつて、その後においても訴因を特定させる日時、場所、方法のうちの或ものを同一事実の範囲内において具体的に明確にするための補正は許されるものといわねばならないのである。……中略……前記起訴状記載訴因は、日時その他の点において明確であるということのできない個所がないではないが、ヘロイン讓渡の場所、方法は明確であり、日時も全く特定していないものとも認められず、訴因全体としては麻藥取締法第四条第三号違反罪の訴因として他の訴因と区別され、その同一性を識別するに足る程度であると認められるのであるから、訴因は特定していることとなるのである。しかのみならず、原審第三回公判調書に依ると同公判期日において原審検察官は裁判官の許可を得て、訴因を明示するため更に具体的に起訴状記載の公訴事実中の不明確な個所を明確にしてその具体性について補正していることを認めることができるから、本件公訴事実に示された訴因は所論のように特定していないものではない。しからば本件起訴状は刑訴法第二五六条第三項に違反しているものではなく、従つて公訴を棄却すべきいわれがないのであるから、原判決には所論のような違法はない。

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